ガーデン職員のある1日
私は、バラム・ガーデンで働いている。
と初対面の人に自己紹介すると、
「し、し、し、し、SeeDですか?」
などと、尊敬と好奇心と恐ろしさがないまぜになったような答えが返ってくるが、私はSeeDではない。
存在感のない父親、口うるさい母親、生意気な弟がいるごく普通の家庭で育ち、バラムにあるごく普通の学校を卒業し、
家から近い、内勤なので服装が自由、というだけの理由で、勤め先にガーデンを選んだ。
ごく有り触れた事務の仕事をこなす毎日は、危険でもないし、ワクワクもしないし、お給料も決して高くはない。
そして、時々同世代の女性SeeDに嫉妬を感じる。
その有能さに。
スリリングな日常を送れることに。
自分にはない全てをもっていることに。
***
自転車置き場に乱暴に愛車を止め、職員通用口に向かっていると、任務を終えたSeeDたちがぞろぞろと軍用車から降りてくるのが見えた。
やっぱり、普通の人間とは何かが違う。
その何かが何なのか。
死への覚悟なのか、生に対する真剣さなのか、命を奪うという行為を、日常的にしているからなのか。
一団の最後に、背の高い、茶色い髪をした男性SeeDが降りてきた。
彼は、他のSeeDとも何かが違っていた。
とんでもない戦いをしてきたような感じがした。
灰色がかった青い瞳は鋭く光り、兵士には似つかわしくない美しい顔立ちをしていた。
要するに、私の好みだった。
彼は、同じくSeeD服を着た長身のモデル風美女となにやら話し込んでいた。
美しくて焦る。
でも、こういう女は、私みたいな事務員を一方的に馬鹿にするんだろうなぁ。
と、思わせる冷たい美貌だった。
ドンッ
誰かにぶつかられると、喜びを抑えきれない、掠れた声でごめんなさい、と謝られた。
私がそれを認識した頃には、私にぶつかった黒髪の女の子は、男性SeeDに抱きついていた。
「スコール、お帰りなさいっっ」
なぁんだ、彼女いるのか
しかもカワイイ
チクショーと内心叫んで、通用口に向かった。
別に、自分があのひとと付き合えるなんて、思ってもないけど。
***
自分の席に着き、パソコンのスイッチを入れると、SeeDデータベースを開き、「Squall」と検索してみた。
一件ヒット。
ああ、やっぱり好み。
しばらく画面のスコールさんにウットリすると、あの美女についても調べてみることにした。
名前は分からないので、数百名いるSeeDの顔写真から探す。
マウスをクリックしまくり、キスティス・トゥリープという名前に行き着いた。
早速、勤務表でふたりの名前をチェックすると、ふたりの任務がほとんど被っていることに気付いた。
ふたりともSランクのSeeDなだけあって売れっ子で、超激務を毎日こなしている。
何となく、悔しい。
私は只の事務員なので、SeeDの任務内容についてはもちろん知らないし、その人選に口出しすることも出来ない。
ひたすら、SeeDの労働時間とお給料を計算し、その額にビックリしたり(バラムにだったら3軒くらい家が建つ)、長時間労働に驚いたりしながら、
残りどれくらい働けるのか、ということを上司に報告するだけだ。
ああ、むなしい。
そして、嫉妬でむらむらする。
「すまない」
はっと顔をあげると、そこにはスコールさんが所在なさげに立っていた。
額に鋭い傷があることに気付いた。
ますますカッコよく見える。
「今月の残りの労働時間を聞きたいんだが」
「少々お待ちください」
私はニッコリと笑って、もったいぶりながら勤務表をさし出した。
アイライン、気合入れてきて良かった。
でも、左人差し指のネイルが剥げていることに気付いた。
スコールさんはむっつりと黙り込んだ。
美形は何をやっても美形である。
むしろ、不機嫌な顔の方が魅力倍増だ。
ふぅとため息をつくと、スコールさんは出て行った。
彼女とデートできないのかな
かわいそう、スコールさん
私だったら、戦地にまでくっついてって、寂しい思いなんてさせないのにー
まぁ、付き合えないけど、毎日の楽しみが出来たからいいかな。
化粧のしがいもあるってもんだわ
と考えつつ、勤務表をしまった。
090412
突発的にかいてみた!
一発書きです^^